2021.08.25
8月18日に開催された『みしまの研究室WEBセミナー』のレポートをお伝えします!
今回は、ニュートリー株式会社 鷹屋 潤氏様を講師としてお迎えし、『経腸栄養管理の合併症~逆流、下痢の対策、最近の経腸栄養剤の傾向~』というテーマでセミナーを実施しました。
経腸栄養法とは胃や腸にカテーテルと呼ばれる管を通し、そこから水分や栄養剤を流入させる人工的な栄養補給法です。
(消化管を使った栄養補給法と区別するため『経管栄養』と呼ばれることもあります)
経腸栄養では、使用する栄養剤の種類や投与速度などにより合併症が引き起こされることがあり、今回のセミナーでは合併症の代表とも言える『下痢』が起こる原因、対策について学ぶことができました。
それでは、ここからはセミナーの内容を簡単にお伝えしていきたいと思います!
【下痢が起こる原因】
一般的に下痢は、①浸透圧性 ②分泌性 ③滲出性 ④腸管運動(異常)性 の4つに分類されます。
経腸栄養で特に注意が必要なのは、①浸透圧性の下痢と④腸管運動性の下痢です。
使用する栄養剤の組成や食品アレルギーが原因となって引き起こされる下痢は、浸透圧性下痢に分類されます。
この浸透圧性の下痢は、カテーテル(経腸栄養で使用される栄養剤を通す管)から腸に入った物質がなかなか吸収されず腸管に滞留することによって腸管内の浸透圧が高まり(濃度が濃くなり)、これを希釈するために多量の体液が腸管に移行することが原因となり下痢が起こると考えられています。
また、腸管運動性の下痢は栄養剤の投与速度が早いことが原因となり、起こります。
栄養剤を注入するスピードが速いと急速に栄養剤が腸管内を通過し、吸収障害が起きるため下痢が引き起こされると考えられています。
【下痢の対策ポイント】
経腸栄養管理において、下痢を起こさないためには次の4つのポイントを押さえておくことが大切です!
①投与速度
経腸栄養剤の投与開始時は注入速度を40ml/hr程度とし、その後徐々に投与速度を速めて5~7日目には速度を150~200ml/hrに到達させることを目標とします。
また、腸瘻の場合は直接腸管内に栄養剤を注入するため胃瘻に比べると下痢が起こりやすく、より時間をかけて投与する必要があるとされています。
投与初日は10~20ml/hrからスタートし、最終的には早くても100ml/hrを越えないようにする必要があります。
②経腸栄養剤(濃厚流動食)の浸透圧
半消化態栄養剤に比べて成分栄養剤は浸透圧が高く(濃度が濃く)、下痢を起こしやすいです。
そのため、半消化態のものに変更することによって下痢の症状が軽減される可能性があります。(個人の消化機能などにより、変更できない場合もあります)
また、糖尿病関連の栄養剤は浸透圧が高いものが多く、下痢になりやすいそうです。
③微生物による汚染
なんと、下痢を発症する人の約40%が感染していると言われているのが、C.difficile感染症(CDI)です。
本来、CD菌は悪い菌ではありませんが、CD菌の保菌者が抗菌薬を使用することで腸内細菌が撹乱され、発症すると言われています。CDIの主な症状として腸炎による下痢が認められています。
これは鼻から管を通す栄養補給法である経鼻胃管留置などによって引き起こされることが多く、マウスを用いた動物実験では乳酸菌を摂取することでCD菌の増殖を抑制できることがわかっているそうです!
④成分と組成
術後など消化管が弱っている状態では、膵液の減少により脂肪吸収が上手くできず下痢になりやすいため、腸管内の水分保持と腸粘膜の維持が重要です。
そこで注目されているのが、グァーガム分解物(PHGG)です!
グァーガム分解物は、ガァー豆の胚乳部から得られる水溶性の多糖類であるガァーガムを酵素で分解した水溶性食物繊維です。
発酵度が高く、摂取することで短鎖脂肪酸の産生を促すことにより腸粘膜の萎縮や損傷を回復し、腸での水分吸収が良くなる効果があるのだそう!
それだけでなく、ガァーガム分解物は腸内の内容物と複合物を形成して腸内の通過時間を長くするため、腸が水分を吸収する時間が長くなり、その結果、便に含まれる水分が減少することで下痢が抑制されます。
今回のセミナーで、経腸栄養管理における下痢の対策について今まで知らなかったことをたくさん学ぶことができました。
経腸栄養では栄養剤のほかに水分を投与することがありますが、その際には固形化(ゲル化)することで逆流や下痢を予防できるうえ、カテーテルなどの汚染も防げるようです。
対策ポイント4つを知っておくだけでも栄養剤を選ぶ際など、役に立つのではないでしょうか。
以上、第18回みしまの研究室レポートでした!
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